2007年12月25日火曜日

『ホームレス中学生』 田村裕

ずっと読みたいと思っていた本。

この本が出版される何年か前に、作者麒麟・田村が貧乏だった頃の自分の話をしているのをTVで聞いたことがありました。
本の内容の半分はこの時に話していたので、記憶の再現という感じで読みました。←いろんな番組で話していると思うので、麒麟を知っている人は、この話わかるわかるという人も多いと思います。
すさまじい内容の話をしているのに、本人は一生懸命なんだけど端から見たらおかしくて、漠然と「何だか知らないけどいい人っぽい」という印象を持っていました。

麒麟はM-1グランプリには常連ということですが、ネタはあまり聞いたことがない(笑)
バラエティ番組でみる相方の川島がちょっとワンパターンで苦手。決勝常連ということなので、ちゃんとみたら案外面白いのかも知れない。
ちなみに今年は準決勝敗退で、敗者復活から上がるとの大方の予想に反してグランプリには出場出来ませんでした。

さてさて前置き長くなりましたが、
『ホームレス中学生』、面白かったです。

お笑い芸人が書いているということで、文章自体笑いを取りにくるものばかりなのかなと思いきや、真面目に自分のこと・家族のこと・周囲の人たちのことを書いていて、正直、感動した自分にもびっくり。
最初にTVでみた彼の印象は間違っていなかったんだなぁと本を読んで思いました。

あんな生活を強いられて、それでもひねくれずに乗り切って来れたのは、彼の持つ素直さだったんじゃないかなぁと思います。
中学生なりの、高校生なりの、その時々の甘い判断の中にも、何となく憎めない要素が感じられて、すごく好感を持ちました。

背景に母親の存在があって、その感情を男の子特有の恥ずかしさで隠すことなく純粋に表現していることに、同じ母としてうれしかったのかも知れません。

相変わらずエッセイは苦手な私ですが、この本は読んで良かったと思った1冊です。ぜひみなさんも読んでみてください。
ちなみに、、、「麻生太郎さんも推薦」だそうです。←読んだんだ!!

2007年12月19日水曜日

『看護婦は家族の代わりにはなれない』 宮内美沙子

「当たり前じゃない」と思いながら、さてさてどんなことを書いているのやらと読んでみました。

この本は1997年に出版されたものです。著者は1946年生まれ。
このエッセイを書いたのは50歳くらい。
「看護婦」とされていますが、現在は「看護師」です。

筆者はHIV感染病棟で働いている看護師。
家族のサポートが患者の救いになるのだと、要するに言いたいのでしょう。

HIVに感染するとは、薬剤投与などの医療行為からのもの、性交渉からのものに分けられると思います。

医療行為からのものでない場合、ご主人が海外などで現地の女性と性交渉を交わした結果であることが多いらしく、妻は裏切られたと悲劇のヒロインになることもある、、と。

はたまた、患者が同性愛者である場合、家族が世間体を気にして患者を恥じてお見舞いに来ないことがあるそうです。それどころか、「死んだら連絡してくれ」的なことを言う人もいるとか。

そのことに関して、家族ってなんだろう?夫婦ってなんだろう?と著者は問いかけています。
困難な状況を受け入れて、それでも側にいてやるのが家族じゃないか。ということらしいです。

私が思うに、彼氏彼女だって、夫婦になったって、育ってきた環境の違いから、どんなに長い間一緒にいても「へぇ、こんなこと思うんだ」という驚き・発見が常にあると思うんですよね。
そういうことを積み重ねてお互いの関係を築いていくのが家族かなぁと最近漠然と思います。
つまり、その背景もよく知らない、ましてや一緒に生活したわけでもない第3者が容易に語れるほど「家族」の形は一定ではないと思うんですよね。
だから、著者が「この家族関係は希薄だ・軽薄だ」と感じて不快感を文章化するのは、やや傲慢ではないかと。。。。

まぁまぁ、看護師事情を語りつつなので、内容自体を否定するつもりはありませんが、自分の考えが正しくて、そこから逸脱するものに対しては不快を感じる、、、的な内容が多い気がしました。

あとがきに、
本書のエッセイのどれか一つでも、読者の皆さんの気分をほんの少しでもなごませ、生きる元気にしてくださるなら、私にとってそれにまさる喜びはありません。
と、書かれていました。

私ってひねくれものなのかしらと、あとがきを読むにつけ思う次第です(笑)


2007年12月16日日曜日

『国防』 石破茂  第六十五代防衛庁長官

以前から気になって読みたいと思っていた本。

かといって、自衛隊とか戦争に興味があるわけではありません。
むしろ、その分野のことはさっぱり。

石破茂防衛庁長官に興味がありました。
現在は、「防衛庁」から「防衛省」に変わり、国防大臣を務めている方です。

いやいや。顔ではありません(笑)
以前TVに出ていた時に、某タレントのくだらない質問にも丁寧に答えている姿に「おもしろい人だな」という印象を持っていました。

内容は国防に関する、石破さんの意見と日本の現状。
諸外国との関係などなど。。。

緒方貞子さんの本を読んだときに、難しい漢字の羅列、専門用語のあまりの多さに、数ページで挫折した私。

今回もチャレンジのつもりで読みましたが、一転、とても読みやすかった、というのが感想です。

私のような素人にでも理解出来る言葉を選んでくれていて、なるほどこの人はこんな考えを持っているのかとすんなり受け入れられました。

まあ、何せ国際情勢に精通していない私。
アルジャジーラ、有事法制、、など言われても。。。
それが何なのか、きちんと説明出来ません。

そんな私レベルの人にも丁寧に説明されていて、「専門用語で話されてもわからないのよ」ということがほとんどありませんでした。

日本が今どのような状況に置かれているのか、この本を読んで、私を含めた国民のほとんどが楽観的な考えしか持っていないのかも知れないなと思いました。

地震が起こったらどうしようとは考えるけど、戦争が起こったらどうしようとはなかなか考えない。
事件事故が多発する今日でも、まだまだ平和を感じる人は多いのではないでしょうか?

わかったところでどうしようもないことかも知れないけど、わかっていたら、ニュースや国会答弁(じっくりみないけど)の意味が少しは理解出来るようになる、、かも知れないし、きっと重要な情報を取得するときに理解力を後押ししてくれる、、、気がしました。←はっきりせんか!!(笑)

基地問題に関しては、やや強引だなと思う点もありましたが、総合的にみて、読んで良かった1冊でした。

ぜひ読んでみてください。


2007年12月10日月曜日

『私は美人』 酒井順子

『負け犬の遠吠え』の酒井順子です。

また斬新なタイトルの本を書いてるなぁと思ってチョイスしました。

「よく見りゃ美人」だの「元美人」だのと、「○○美人」というタイトルを幾つか並べて何だかんだ書いてる(笑)

内容は軽薄だし、はっきり言ってくだらない。
なのに、何故か読んでしまう。しかも笑ってしまう。、、、そんな本(笑)
ほとんど読み流しでいけるので、箸休め??的にさらっと読んでしまいました。

『負け犬の・・・』の時も感じたことですが、この酒井順子さんという人は大胆。
非難されることも多いだろうし、本音をさらけ出しすぎ!!

『私は美人』の書き出しは、「実は私は、美人なのです。」
ちょっとニヒルな感じで、興味をもった方は読んでみて下さい(笑)


2007年12月8日土曜日

『にぎやかな天地』 宮本輝

私的に久しぶりにヒットでした。
やっぱり宮本輝は凄い。

内容は船木聖司という32歳の青年が「豪華限定本編集・制作」という仕事に携わりながら自分の人生と対峙していく物語。

彼が母親のお腹の中にいるとき、不慮の事故で父親を亡くしてしまう。
人生の中で、一見不幸に見える出来事でも、その後に幸に転じることがある。
それは、自分の考え方次第だったり、偶然だったり。

本文抜粋。
「宇宙が出してる波動は7.5ヘルツで、これが波動のなかではもっともすばらしい心地良い波動やそうや。調和と秩序を保つために最適の波動で、それと同じ7.5ヘルツの波動の人間がおるんや」
(中略)「赤ちゃんや」

登場人物との会話のなかで出てきた何気ないやりとりに妙に納得した私。
「宇宙と一体化して、悲しみもない、憎しみもない、恨みもない。きれいなきれいな心や」
年を重ねていくごとに、世の中の塵芥に染まっていく、、、なるほど。

宮本輝の作品の登場人物は、読み手の私からみて、本当に普通の人物。
「こういう気持ちあるある」とか、うまく言葉に出来なかった自分の気持ちを「そうそう、そう言いたかったの」とか、実に小気味良い。

そういう感情面で惹きつけるばかりでなく、ひとつの物語を書くためにどれだけの知識を駆使してるんだと感心させられずにはいられないところもまたいい。
いい加減に誤魔化すことなく、丁寧な取材をしていることが文章からも伺える。
また、それを物語の中で取り入れるセンスも抜群なこと!!

物語では発酵食品に関する豪華限定本の制作を手がけています。
鰹節の話や鮒鮓の話、なかなか面白かったですよ。

まあ、多少、宮本輝ワールドもあり、途中のアクの強さと、「え?終わり?」的な感じが、苦手な人は苦手かも。

しかしながら、この本はお薦めです^^

私もあと2、3回は読み直して熟読したいと思いました。
いろんな箇所で、感心したり、人生を感じたり。
読むたびに違う感じ方をしそうです。





2007年12月5日水曜日

『「怪獣」のそだてかた』 紺野美沙子

女優の紺野美沙子が妊娠・出産・子育てについて書いた本。
図書館でふと目について借りて来ました。

日頃私もチビ助を「怪獣」と思っていたから(笑)興味津々のタイトル 1~2時間程度で読める内容。

面白かった☆うなづく場面や、きっと同じ母じゃなければ泣けないようなところで涙ぐんだり←他の人が読んだら、どこに泣くシーンが??かも(笑)


『だから、僕は学校へ行く!』 乙武洋匡

「五体不満足」の乙武洋匡さんが書いた本。

今年4月から東京都杉並区の小学校の教員になったそうです。

「五体不満足」。乙武さんもさることながら、その母に感心させられた本だった。 先天性四肢欠損。。もし自分にそんな子供が生まれたら。。。う~ん。想像するのも難しい。 乙武さんの母親は、いろいろな思いも抱えていたと思うけれど、そんな我が子を初めて見たとき、「かわいい」と言ったそうです。 母親のショックを考慮してしばらく会わせなかったことも、その言葉につながったかも知れないけれど。 母は強し。。。私も見習いたい点がたくさんあります。

「だから、僕は学校へ行く!」。乙武さん、やっぱり人を引きつける能力にたけてるなぁ。 展開する話にどんどん引き込まれて、あっという間に読んでしまいました。 こういう感性を持った先生に、チビ助も教えてもらいたいなぁと思いました。 乙武さんを育てた母のように大きな存在になりたいなぁとも。



『11時間』ーお腹の赤ちゃんは「人」ではないのですかー 江花優子

ある夫婦が交通事故にあって、奥さんは妊娠8ヶ月。 事故による胎盤早期剥離にて緊急手術、11時間後に胎児死亡。 加害者は、夫婦に対する「業務上過失傷害罪」のみ。赤ちゃんに対するお咎めはなし。
法律上「胎児は人にあらず」という解釈に、とても衝撃を受けました。
医療サイドのミス(薬剤不適投与や帝王切開のミスなど)による裁判は多いけど、交通事故による胎児死亡は症例数も少ないとか。。 そのためか、「胎児は人にあらず」という言葉が慣習化されてしまっているとのこと。 例え医者が、胎児が死亡した原因は交通外傷によるものと明確な診断書を書いても、「過失致死」での立憲は困難な状況なんだそうです。
胎児はいつからヒトなのか。。。発生学的にみると難しいかも知れないけど、、私たちの気持ちからすると、お腹の中にいるとわかった時点でヒトなんじゃないかなぁと思うのです。 法律の壁ってよく聞くけど、本当におかしな話多い気がします 健康で元気に生まれてくるはずだった赤ちゃん。 8ヶ月なら外見もちゃんと普通の赤ちゃんのはず。 その赤ちゃんが交通事故によって亡くなったことがはっきりしているのに、胎児はあくまでも「ヒトではない」と判断する日本の法律に驚きです。

本にも書いてあったけど、凄く憎んでいる人が妊娠していたとして、故意に事故を起こして胎児を殺しても、わざとではないと言えば、その人は「殺人罪」ではないのです。 しかも刑の軽いこと 禁固2年、執行猶予4年。とかそんな程度。

私がもしそんな立場におかれたら、、、想像を絶するあまり考えも及ばないけれど。。。 母親にとっては読むに耐え難い内容だけど、、こんな事実もあるんだなぁと始めて知って、法律が変えられないうちは、知識だけでも持っておく方がいいのかなぁとも思ったりして。 いろいろ考えた1冊でした。



2007年12月3日月曜日

『花の回廊』 宮本輝

私の好きな作家。 「宮本輝は知っている」コーヒーのCMにも出ていました。
初めて読んだ本は「星々の悲しみ」。 高校の頃、教科書に載ってて驚きました。

「花の回廊」は、「流転の海」が第一部で、その第五部。
最初のころのインタビューで五部完結って言ってたのに、、、まだまだ続きそう 好きな作品がまだ読めるとうれしいやら、まだ続くんかいと若干うんざりするやら(笑)
面倒くさがりの私としては1冊で(せめて上下2冊で)完結して欲しい。。。 だって、続編が出ても、それまでの内容忘れてること多いし←本当に好きなのか(笑)

宮本輝で有名所は、「優駿」か「泥の河」(川の三部作のひとつ)です。 内容は、わりと泥臭い人間模様が中心なのに、読み終わった後、清々しい気持ちになります。そうじゃないのもありますが;


『深い河』 遠藤周作

遠藤周作の本、実は初めて読みました。

物語に出てくるガンジス河に対して、「ヒンズー教徒のためだけではなく、すべての人のための深い河という気がしました」という文章がありました。

中学校の時の担任の先生が、「人生に疲れたら印度へ行け」とよく言っていました。 印度には道ばたにたくさんの死体があって、それなのにその死体に気を配る人はあまりいない、、、、と言っていましたが、現在の印度がどうなのかはよくわかりません。

「深い河」を読んで、その担任の言葉を思い出したけれど、今の自分を変えたいとか、この苦しみから逃れたいとか、、そんな理由さえ、印度へ向かうには浅い感情なのかなと思いました。観光ならまだしも、人生に疲れたという理由で印度へ行くなら、その前にもっともっと自分を見つめ直してからじゃないと、空虚な気持ちで帰ってきそうで 人生かけて印度へ行くのは最終手段という感じです。
よい方向で考えるなら、私もまだまだどん底を味わっていないんだなぁ、そして改善の余地(方法)がたくさんあるんだなぁ、という感想です。