2007年12月8日土曜日

『にぎやかな天地』 宮本輝

私的に久しぶりにヒットでした。
やっぱり宮本輝は凄い。

内容は船木聖司という32歳の青年が「豪華限定本編集・制作」という仕事に携わりながら自分の人生と対峙していく物語。

彼が母親のお腹の中にいるとき、不慮の事故で父親を亡くしてしまう。
人生の中で、一見不幸に見える出来事でも、その後に幸に転じることがある。
それは、自分の考え方次第だったり、偶然だったり。

本文抜粋。
「宇宙が出してる波動は7.5ヘルツで、これが波動のなかではもっともすばらしい心地良い波動やそうや。調和と秩序を保つために最適の波動で、それと同じ7.5ヘルツの波動の人間がおるんや」
(中略)「赤ちゃんや」

登場人物との会話のなかで出てきた何気ないやりとりに妙に納得した私。
「宇宙と一体化して、悲しみもない、憎しみもない、恨みもない。きれいなきれいな心や」
年を重ねていくごとに、世の中の塵芥に染まっていく、、、なるほど。

宮本輝の作品の登場人物は、読み手の私からみて、本当に普通の人物。
「こういう気持ちあるある」とか、うまく言葉に出来なかった自分の気持ちを「そうそう、そう言いたかったの」とか、実に小気味良い。

そういう感情面で惹きつけるばかりでなく、ひとつの物語を書くためにどれだけの知識を駆使してるんだと感心させられずにはいられないところもまたいい。
いい加減に誤魔化すことなく、丁寧な取材をしていることが文章からも伺える。
また、それを物語の中で取り入れるセンスも抜群なこと!!

物語では発酵食品に関する豪華限定本の制作を手がけています。
鰹節の話や鮒鮓の話、なかなか面白かったですよ。

まあ、多少、宮本輝ワールドもあり、途中のアクの強さと、「え?終わり?」的な感じが、苦手な人は苦手かも。

しかしながら、この本はお薦めです^^

私もあと2、3回は読み直して熟読したいと思いました。
いろんな箇所で、感心したり、人生を感じたり。
読むたびに違う感じ方をしそうです。





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